自分に与えてあげる
- 土方 奈々絵

- 2025年11月9日
- 読了時間: 3分

先日、日墺文化協会主催の「オーストリア音楽講座」に参加しました。
テーマは、ウィーン好きの人なら誰でも知っている歌、
『ウィーン、わが夢の町』の深掘り。
作曲家のエピソードの数々と素晴らしい歌声も聴けて
ウィーン好きの私にとってなかなか興味深く楽しい時間でした。
…ところが、
自分でも不思議に思うのですが、
『ウィーン、わが夢の町』を歌うことにそれほど興味が惹かれないのですよね…。
やっぱり私は宗教曲の方が好きなんだなぁ…としみじみ感じていました。
私が宗教曲の美しい声と音の響きに魅せられるのには、
中学・高校で讃美歌やメサイアの『ハレルヤ』コーラスに出会っただけではなく、
大学での皆川達夫先生とのご縁も大きかったと思います。
みんなは親しみを込めて「みなちゃん」と呼んでいましたが、
実は中世・ルネッサンス・バロック時代の西洋宗教音楽と
日本のキリシタン宗教音楽の第一人者。
その皆川先生の指揮でポリフォニーの宗教曲を歌った経験は、
私の中でも大きな基盤になっているのだと思います。
皆川先生は、特に声の響きを大事にされて、
事あるごとに言及していました。
それなのに…
私は2年生になって声帯を痛めてしまい
声が出なくなってしまいました。
声帯に力を入れる発声の癖が抜けず、
無理やり声を出し続けたのが原因だと思います。
病院にも通い、少しずつ声は戻ってきましたが、
普段の話し声も歌声も、息漏れのするハスキーボイスに。
発声に問題を抱えるようになりました。
歌うことは好きだったし、声のトレーニングにもなるので、
合唱団に復帰し、卒業後も機会があれば合唱を続けてきました。
でも、ほんとのことを言えばずっと
練習に出ても「声を出せない」ことに苦心してばかりでした。
ソプラノなのに高音が出せないし、
フレーズや歌いまわしを注意されても、
息が続かずフレーズをうまく歌いつなげない。
たまーに調子がいい時は、高音も出るし
息が続いて(普通に)歌うこともできましたが、
その「いいポジション」を再現することができなくて、
「本当に下手の横好きだな…」と自分でも情けなく感じることばかりでした。
2年前から
母校の現役学生たちと一緒に歌う機会に恵まれましたが
状況は変わらずでした。
ある時、のびのびと歌っている学生に
引け目を感じている自分がいることに気づいて、
「ああ、このままではいけない。
ちゃんと発声を習って、自信をもって歌えるようになりたい!」と思いました。
そこで、今年から月に1回、
ボイストレーニングの個人レッスンを受けています。
長年の声帯に力を入れる癖は簡単に抜けてはくれず、
先生も試行錯誤しながらのレッスンです。
正直、なかなか上手くはなりませんが、
それでもちゃんと上のA(ラ)が出せることが分かったし、
トレーニング後は自分の声がとてもよく出ているのがわかるので
「やればできるんだ、私!(笑)」と
自信を持てるようになったことが一番大きかったかもしれません。
おかげで、以前よりは「いいポジション」に入りやすくなり、
練習で気持ちよく歌えることが多くなりました。
「発声を習う」という機会を自分に与えてあげたからこそ
自信をもって歌えるようになってきたし、
「海外で歌ってみたい」という漠然とした夢を
叶える機会もついてきたのではと思っています。
皆川先生から教えていただいた美しい旋律を、
いつか自分1人でも堂々と歌えるようになりたい。
これも、私の夢の1つです。
今日はコロナ渦中に帰天された皆川先生を追悼するミサが開かれます。
今できる精いっぱいの美しい響きで献唱してきたいと思っています。
あなただったら、
今の自分に何を与えてあげたいですか?
それではまた!




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